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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
明治建築の名残りをとどめている「石炭商組合」の事務所は、そこから、一町とは離れていない。これらの建築の間を、このごろは、連日、あわただしげに、多くの人々が右往左往し、殺気に似たものがただよっていた。
「この争議はどうなるとじゃ?」
「石炭商が強硬で、てんで、話にならんらしいわい」
「資本家は、おれたちゴンゾが乾干しになろうが、のたれ死にしようが、なんとも思わんのよ。痛うも、痒うもねえとじゃ」
「人間と思うちょらん」
大籠、モッコ、ロープ、バイスケ、などの置いてある、石炭でよごれた岸壁附近で、沖仲仕たちは、三々五々、しきりと、評定をする。そして、どこの組でも、最後になると、申しあわせたように、
「友田喜造じゃ。あいつが、ほんとうのおれたちの敵じゃ」
という、歯を噛む呟きに落ちつくのが、常であった。
労働組合では、書記長の勝則が、同志たちと、謄写版刷りの「組合ニュース」や、ビラなどを次々に作って、仲仕たちの闘志をあおることに努力していた。しかし、その団結は、いつでも、共働組の一角からくずれてしまう。
「お父さん、どうも、共働組の仲仕は――労働組合に入ると、命がないぞ。