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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
一番鶏の鳴くのをきいて、――こりゃ、いかん。先に行って、段取りだけでもしとかにゃ、大村組に負ける。……そう思うたもんで、あわてて、同じ部屋の者だけ、四人起して、二時ごろ、家を出たんです」
「それは、おれも気づかんじゃった。これで、もう、こっちの勝ちじゃ。親分に話して、お前を取り立ててもらうようにしてやるぞ」
「いえ、そんなこた、ええです」
殺風景な雛段を伝って、石炭を満たした丸籠が、ぐんぐん上がる。二列のエスカレーターのようである。甲板に達すると、移し方の手で、焚料口に、石炭が投げこまれ、空籠が艀の中に投げ落される。この迅速な循環によって、みるみるうちに、艀の中の石炭が減って行く。
マンは、「入れ鍬」の組にいた。女の力では、棚立ちはできなかった。籠は、バスケットが訛って、バイスケと呼ばれている。マンは、同僚がバイスケ一杯満たす間に、かならず、三杯、入れた。正確な機械のようである。
「そら来い、そら来い」
拍子をとりながら、金五郎は、上から、艀の中を見下していた。その眼は、マンに、釘づけされている。
「みんな、がんばれ。船を傾けてしまえ」
助役は、もう、勝利の確信に有頂天だ。