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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
ゴトゴトゴト、という、ウインチの音とともに、金五郎の乗った大籠は、空間に浮いた。ゆらゆらと、高く、つりあげられた。
「デッキに降してくれ」
合図方の仲仕にいった。
大籠は、甲板の上に据えられた。
金五郎が飛び下りると、ふたたび、大籠はまきあげられ、三番ハッチの底深くに、降されて行った。「ダンブロ」の中にいる仲仕が、ワイヤの先を、籠の裏底につけてあるチェーンに引っかけて、石炭を転覆させる。カアーッという石炭の音。そのまま、空籠がつりあげられ、また、舷側の艀に降されて行く。
「高司君は、居らんな?」
両手で、ウインチ番へ合図をしていた巨漢の仲仕は、うさん臭そうに見たが、
「知らん」といった。
金五郎は、船上を見わたした。方々に、いくつもかかげられてある「友田」の提灯が眩しい。そのちらちらする蝋燭の明かりが、自分を嘲笑しているように思われた。
ボーシンの姿を見つけた。
「高司のオヤジは、どこに居るじゃろか?」
「さっき、船長と船橋に上がりよったですがなあ。……ああ、います、います。やっぱり、ブリッジに」
金五郎は、細いタラップを登った。
深夜の洞海湾を、登りながら、左右に眺めた。