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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
正確な手さばきで、石炭を積んだ大籠が、危なげなく、昇降した。
(おれは、こうやって、現場で、仕事をしとるときが、一番、楽しい)
金五郎は、白い湯気の中に突っ立って、胸のひらけるような思いを味わっていた。
船橋のうえから、船長が、パイプをくわえたまま、にこにこと、眺めている。
カン、カン、カン、カン、……
鉦が、鳴りだした。
「仕事、やめえ」
高司清市が、どなった。
それから、数分の後、整然と、現場をすてた仲仕たちを乗せて、大伝馬船は、寿満丸の舷側を離れた。深夜の黒い波を切って、若松側の岸壁に向かって、漕ぎ進んだ。「友田」の提灯にとりかこまれて、憂鬱そうに、金五郎が、その舳に立っていた。金五郎の乗って来た小伝馬は、艫に曳航されている。
八月二十三日、午前三時を期して決行された沖仲仕の総罷業によって、洞海湾内のすべての沖積荷役は停止された。港は、死んだようになった。
争議本部には、米俵が積みあげられ、女仲仕の手によって、炊きだしが行われた。
マンは、炊きだし隊長である。
一日が、過ぎた。
二日が、過ぎた。
マンは、争議団の台所を引きうけて、いそいそとしている。