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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
顔を紅潮させ、一段と、声を張りあげて、語りつづけた。
仰天して、思わず撥を休めていた豊沢玉輝も、落ちついた金五郎につれて、ふたたび、ヤ、オ、ビン、ビビン、ビイン、と、三味線を弾きはじめた。
騒然となりかけた場内も、次第に、静まった。
けれども、この一発の銃声が合図であったかのように、日若座の外には、すでに、すさまじい決闘が展開されていた。
日本刀、竹槍、猟銃、ピストル、鎌――いろいろの武器を持ったヤクザたちが、眼を光らして、街中をかけまわり、各所で、果しあいが行われている。
街の店は、大あわてで、大戸を下したり、ガラス窓をしめたりした。いたるところで、発砲のたびに、戸に当る音、ガラスの割れる音がした。
金五郎を射った男らしい、半白頭の五十がらみの博徒が、一散に、劇場から、飛び出して行った。その後を、青鉢巻の若い男が追っかけた。近づくと、背後から、長い刀をたたきつけた。半白頭は、雪のうえに転がったが、ピストルを乱射しながら、逃げて行った。
青鉢巻は、右手のドスを、血を洗うかのように、道傍に立っている雪ダルマの胴に、ズベッと、さしこんだ。二三度、しごいた。