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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

短刀を口にくわえ、赤ダスキをかけた「猫婆さん」が、花札を、ビュウ、ビュウ、と、目つぶしの礫のように、風を切って投げながら、街を練り歩いている。目標が友田勢であることはいうまでもない。もし、それが当れば、剃刀をぶっつけられたと同じだ。十数匹の猫が、川野ノブの後をついて行く。

「眼のいらん者は、こっち向け」

菊、牡丹、萩、菖蒲、桜、梅――十二月の花々が、雪のなかを飛んで、雪のうえに落ちた。

「猫婆さん、危いばい」

胡蝶屋豆八が、電柱のかげから、声をかけた。

「危いのは、お前じゃい。家に帰って、炬燵のなかにでも入っちょれ」

ドテラを着ているノブは、ギョロギョロ、あたりを見まわす。

明治町と三内町との角で、

「来やがれ」

「来やがれ」

刀の切っ先をつきあわせたまま、二人の博徒が、睨みあって、立ち往生している。どちらの額からも、生汗がダラダラと流れ落ちているが、もう二十分近くも、刀を合わせたきり、喘ぎ喘ぎ、同じ言葉を投げあっているだけだ。その言葉も、今はくぐもった呻き声に変っている。

二人は、次第に、腰を低めて、雪の地面へ坐りこんでしまった。それでも、刀だけはなお突きあわせて、まだ、