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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
飛びすざった。
「それは、いやです」
「いや? へえエ、ええことしたうえに、罪を帳消しにしてもらうのがいや? もう、処女でもあるまいに。みんな、そうするんじゃがなあ。それが、利口だよ」
そういううちにも、黒い大男の身体が、小柄なマンを、風呂敷につつむように、からんで来た。マンははげしく抵抗したが、強い男の腕力に抱きすくめられた。まったく身うごきができなくなった。
ドブロクくさい男の息が、顔に近づいて来た。マンは土間にあおむけに転がされ、恐しい力でおさえつけられた。
前に、一度、マンはこれと同じ目にあったことがある。
この夏の盆踊りの晩であった。草深い山峡の部落では、盂蘭盆会は、若い男女が思いきり羽をのばす唯一の祭である。盆踊りは、柿ノ坂という、養蚕のさかんなことで有名な部落の仲蔵寺で行われる。谷口家先祖代々の墓も、この寺にあった。
父善助は、子供たちをこの寺につれて来て、祖先の墓の前に立たせ、昔ばなしをするのが好きだった。もう時代のほどもわからぬ古びた墓石は、原形をとどめぬほど、方々がかけている。文字もよく読めない。しかし、善助は、
「ほうれ、この紋を見れ」