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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
消毒したり、棺桶に入れたりするのは、市役所の仕事じゃないか。わたしは、市役所の使用人じゃないよ」
金五郎は、褌一つの素裸である。羅病した仲間を介抱するのに、着物を着ていては邪魔くさいので、脱いでしまったらしい。胸の厚い、たくましい筋骨の、肌理のこまかい、まっ白な身体が、秋の陽に、まぶしく、光っているようである。胸毛が、濃い。
そこへ、
「玉井、どしたんじゃ?」
と、浜尾市造が、やって来た。火事装束をして、黒いマスクをかけている。
役人が、横から、
「これは、浜尾君、大変だね。なにね、この男、僕が、死人を棺に入れろといったのに、どうしても、いうことを聞かないんだよ」
「そうですか。……玉井、役所も手が足らんらしいから、すまんけど、お前、世話ついでに、ひとつ、死人を棺桶に入れてやってくれんか」
「わかりました。入れます。親方がいうのなら、いつでも入れますよ。死人を舐れ、といわれや、ねぶります。料理って食え、といわれても、いわれたとおりします。役人の命令なんて、誰がきくもんか。権柄ずくなら、いやなこってす。……なあ、新公」
と、かたわらの森新之助を、かえりみた。