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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

行こうという魂胆。ただし、山木がその実物をどこに隠してあるのか、それが判らなければこの芝居は打てない。

そこで、有明荘の崖下の素人屋の二階に住んでいる花という美しい縫子。それがふだん鶴子と昵懇にして姉妹も同様に睦み合っていたから、多分その辺の事情に通じているだろう。もし知っているなら厭が応でも吐かしてしまえ。その花は間もなく、幸田の相棒、公園々丁長酒月守がここへ連れて来る。

松沢は印東と膝をつき合わせ、美事に禿げ上った額を尤もらしく皺め、塩吹きのように口を尖らしながら、

「それァ薄情だ。それァ、いかん。……聞けば、あんたと山木とは巴里以来の切っても切れぬ仲だという。……それを、そんなちょろっかな、そんな水臭いことがありますか。あれだこれだとお養父さんへ橋渡しをさせ、さんざ、あんたに骨を折らして置きながら、話が纒まりかけると、急にあんたを袖にして、口銭の独り占めなんてえのはあんまり太い。いかに何でもそれァいけねえ」

と、ここがキキドコロと首を振り振り弁じ立てる。印東は口紅を塗った薄い唇を口惜しそうにキッと噛んで、

「お前、可愛いいよ、なんて頬ずりしたりなんかしたくせに、あれはみんな、嘘だったのよ。