轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

壁の時計が八時を打つと、丸腰の巡査が入って来て、有明荘の崖下に住む花という縫子が、至急お耳に入れたいことがあるといって受付で待っていると告げる。真名古が頷くと、二分ほどの後、花が逆上したような眼付で入って来て、いきなりその前の椅子に掛けると、

「あなた、大変よ。こんなところでうッそりしていては駄目。王様のダイヤモンドを奪ったやつがいます」

真名古は鬱陶しそうな顔つきで、

「ほう、耳よりな話だね。一体、誰が奪ったのかね?」

花は夢中になって身をすりよせ、真名古の腕に手をかけながら「中洲」の出来事と、幸田がした話を残りなく物語る。真名古は聞き終ると、

「山木の爪の間に壁土が詰まっていたというのだね?」

「ええ、そうですの。それに腕時計のガラスが壊れていたんですって。……どこかにガラスのかけらが落ちていなかって?……ほらね、あたしがそういったでしょう。毬栗頭のようだったけど、ひょっとすると、何か冠っていたのがそう見えたのかも知れないって。……腕のキラキラ光るものも、私がいったように、やはり腕時計だったのですわ」

真名古は事務机の上に頬杖をつき、やや長いあいだ黙然と眼を閉じていたが、急に立上ると本棚の中から一冊の薄い横文字の本を探し出し、膝の上で静かにページを繰りながら、