轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

以来各所を酔遊した次第を告白すれば、何しろあんな異相の皇帝のことだから、一人や二人の印象に残り、両人が夜更けまで連れ立っていたことを証明して呉れる者もあろうから、その皇帝が加十だけを松谷鶴子の住居にやるなどとは常識では考えられぬので、官憲もこの点に疑問を起し、当夜三人であったという加十の申述が事実かと思うようになるかも知れぬ。甚だ心細い反証だが今のところこれだけが一縷の望みなのである。

加十は様々思案の末、いよいよとなったら、この点を申し立てようと一旦は決心したが、然し一方からいうと安南の皇帝が殺人を行ったなどというのは何という素晴らしい特種であろう。やりようによっては日本国中を唸らせることが出来るのである。のみならずこの実事を知っているのはお馬婆と多少の官憲を除けばこの広い東京で古市加十ただ一人。しかもその加十はこの事件の目撃者で同時に犯罪の証人である。これほどのスクープをたとい未熟なりといえども雑報記者の端くれなる古市加十が雲煙看過しているものであろうか。

加十はつい今まで酔中夢醒の状態で己れの職業のことはサラリと忘れていたが、ここに思い到ると猛然たる職業意識が起って来た。