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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
とるにもたりないわれわれではござんすが、何卒この御鎮圧にわれわれもお差し加えなすって頂きたいんでございます」
白銀のような白髪をオールバックに撫でつけ、団十郎張りのハリのある眼に柔和な光を湛え、膝に握り拳を置いてゆったりと語り続けるのである。
「御存じの通り、いまお上をお騒がせ申している野郎どもは、わたくしの身内でこそござんせんが、同じ筋をひく土方者、聞けばどうやら必死の様子で、機関銃さえも持っているという話。どういう訳柄があって、こういう騒ぎをするのか存じませんが、それに向って行けば必ずや十、二十の人死が出来る道理がございます。それがお上の役目とはいいながら、埓もねえ奴らを押えるのに行先永いりっぱなご人数の命がむざむざ落されるのかと思うと、わたくしはいても立ってもいられない心持がするんでございます。これが素人衆というならばこんな差出がましいことを申上げるんじゃありませんが、今申上げました通り、相手はわたくしどもと同様なやくざだということになれば、所詮見過ごしにしているわけには参りません。それでこういうお願いを申すんでございますが、出来ますことならば随分の御手伝いをさせて頂きたいんでございます。