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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

十

けれどもだ。」

日はまたかげって尾花白く、薄雲空に靉靆く見ゆる。

十

「小田原の神に、霊がおあんなさればなおの事、捧げられる供物、お初穂が、その品物のために、若い娘の身に、過失のあることをお望みはなさりはせん。

な。」

と再び肩に手を。

「こんな可愛い姉さんにするまでに、第一お前のお父さんの、丹精を思って御覧……幾歳だ。」

「六。」と低声である。

「六? 十六か、それまでにゃ、それこそ、その十国峠に日の出るの、大島に月の沈むのを、幾たび見たか知れやしない。

佳い児だ、いうことを肯いて、身体を大事にしなけりゃ不可よ。まったくだ、はるばる使に来てくれる姉さんを、小田原のお宮でも、どんなに御心配だか知れやしない。」

背掻い撫でて、もの優しく、

「分ったか。」

「はい。」

旅客は勇んで口軽に、

「佳い娘、佳い娘。」

「じゃ貴下。」

「むむ。」

「もしか、あの、今度のような事がありましたら、出して見せても可くってね。」

「可いともさ。」

「なに、それでは貴下のおっしゃることは、神様の心とおんなじなの。」

「同一だとも!」

お鶴は何かいそいそして、

「だから私が酷いことされようとした時に、助けに来て下すったんだよ。