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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
『かんじんな的が少し曲がっているげな。さ、改めたぞ。やらっしゃい』
と、身を退いて、又、じいっと環の手元を見つめていた。
(要らざる介錯)
と、思いながら、環は、刀を持ち直して、一気に、兜の上へ斬りつけた。
ばん! と異様な音響がして、何事ぞ、刀は二ツに折れて飛んだ。
利鎌のような刀の欠けは、宙へ上って、ぶんと、観衆の中へ落ちた。
――どっと、そこの人々がうごく。
同時に、直胤の弟子、そのほか、かかる事あれかしと密かに祈っていた連中は、手を打って、わっと嗤った。
『……し、しまった!』
鍔からわずか一尺ほどしか残っていない半身の刀をみつめたまま、環は、茫然――われも無くなってしまった。
動くことすら、忘れていた。いつ迄も、折れた刃を、その儘、身を硬ばらせて、髪をそそけ立てていた。
唇は、見るまに、色を失った。慚愧の眼からは、とめどなく、ぼろぼろと涙がつたわってくる。――周囲の嘲罵も、侮蔑の眼も、頭が痺れて、聞えなかった。
『――環っ、環っ、退がれっ。……もうよい、引き退がれ』
誰か頻りと、自分の腕を組んで、引っ張る者があった。
彼の脚は、墓石みたいに、動こうともしなかったが、ふと、その人の顔を見ると、柘植嘉兵衛であったので、はっと弛むと、