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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

『それはそうでしょうが、浅右衛門の手にかかって、斬れ味のよかった理を知っていますか』

『おれの腕が確かだからよ』

『そうではないでしょう。極月の二十七日の晩、お師匠様はお留守でしたろ』

『遊びに出かけて、翌日の昼間、頭の重い顔して、帰っておいでなすった。酒のことは、いくら云っても無駄だから、もう御意見は云わない事にした』

『何を云っているんです。……あの晩、お師匠様は、清人さんの刀が見事斬れるか斬れないか、それを心配する余り、家へ帰らなかったんですよ』

『えっ、神信心にでも行って下すったのか』

『いいえ。お帰りになってから、私が、着物を畳んで上げると、何ともいえない嫌な匂いがするので――オヤ、死人臭い――と迂っかり云ったら、お師匠様が、きっと私を見て、黙っていろ、と恐い眼をしてこう仰っしゃったんですよ』

『ど、どう云ったんだ』

『――浅右衛門の胴試しに会って、もし、清人の刀が、斬れなかったら、あいつの一生涯は、浮かばれない事になるから、小塚っ原の非人に金をくれて、試しにかける死骸を借り、明け方まで抱いて寝て、死骸の肌を温めておいたんですって』

『……えっ、師匠が、死骸を抱いて寝たんだって』