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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

三

窪田清音は、来訪の客を見るたびに、

『不届き至極な奴でござる。――見つけ次第に、お報らせ下さい。槍鞘払って、一突きに、成敗してくれまする』

と、非常な怒り方であった。

客は皆、

『武器講の金を蓄え置き、逐電したものでござろう』

と、云った。清音も一緒に、

『あやつ、平素から、金には汚い奴で』

と、罵った。

今になって――と、陰で清音を非難する者もあったが、始末は悉皆、清音がつけたので、日が経つうちに、人々も、問題にしなくなってしまった。

三

世は、愈※(二の字点、1-2-22)騒がしい。

漸く、江戸の民衆にも、時勢の動乱が、眼にも、耳にも、解って来たのである。

弘化、嘉水と、年号の短く変るのまでが、慌しい感じを世に与えた。

どこに隠れていたのか、山浦清麿は六、七年ぶりで、ぶらりと、江戸へ戻って来た。

(家があるかしら?)

と、すら思いながら、北伊賀町へ来てみると、清人は仕事場にいた。お次は、米の磨水を流していた。

『よく鍛冶小屋を護っていてくれた。だが、二人とも、変ったなあ』

『お師匠様こそ』

三名は、お互いに、茫然として、何から話そうという事も、俄に思い出せなかった。