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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
影男は、びっくりしたように立ち止まった。
「そういえば、なるほど、そっくりですね。不思議なこともあるもんだ」
「で、名まえはなんというんだ」
「いろんな名があるんですよ。速水荘吉、綿貫清二……それから佐川春泥……」
それを聞くと、影男がパッと飛びのいて身構えをした。
「それが、きみが殺そうとしている男か」
「そうですよ。こんどの事件の被害者というのは、おまえさんなのさ」
いうかと思うと、須原はポケットからピストルを出して構えていた。
「おいッ、おれを殺すと後悔するぞッ、恐ろしいことがおこるぞッ」
影男はじりじりとあとずさりしながら、しかりつけるように叫んだ。
「ワハハハ、おどかしたってだめだよ。おまえさん、自分が殺されるとも知らないで、おれに完全犯罪のやり方を教えてくれたじゃないか。おれのたくらみを、少しも気づかなかったじゃないか。なんの用意ができているものか。さあ、覚悟しろッ」
空気を裂くような鋭い音がしたかと思うと、影男のからだが、地上にどっと倒れていた。
須原はピストルを構えたまま、じっと見ていたが、影男は少しも動かない。一発で息が絶えたのであろうか。