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にっき

日記

宮本 百合子

09 一九二三年(大正十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页

青空文庫

九月九日

赤坂見付で、国男さんのオートバイやをさがしたら、皆つぶれ、形もなし。表町へ来ると、中山氏の煉瓦壁、御所の堤くずれを見る。今度は鉄骨のない煉瓦建築は多くの人を殺した。

往来、まるで大混雑、立往生をして居る電車に一杯、尋ね人、被害地図、政府の告示等貼ってあった。

A、藤沢の安否をたずねに浅草にゆき青くなるほど疲れてかえる。無事であった。溝などに死人があった由。

青山では五日頃から野菜もあるので、基ちゃんに、青菜一束、バター一斤持たせてかえす。

九月九日(日曜)

元禄、安政の大地震のときにも、スイトン、ゆであずき類大繁昌であったらしい。きのうも到るところに、スイトン一杯十銭、奉仕的努力などと云う旗を出した小車の店を見た。梨西瓜、ゆであずき、リンゴ等往来に並んで居る。

英国大使館前の、この春夜桜を見たところの片隅に死骸収容所が出来て居た有様忘られず。俥、殆ど通らず。自動車、オートバイ皆大きな、各省、団隊救護班の布をはりまわして疾駆す。びっしり兵をのせたトラック、騎馬の一隊、混乱の間で、軍隊の整然と秩序ある行進が非常に心づよい頼りある感を与えた。ひどいほこりで話にならないが、其那ことに頓着出来ず。