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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
十二月二十二日
然し、これで、自分は或、仕事の上の納得をした。――小説の材料と云うことにつき、又、目のつけ方と云うことにつき。
題材に、特別なロマンティック、Strange なものを選ぶのが第二流的芸術であることは、「スーラーブ」を書いて居るうちにつくづくわかった。日常の心持を深くほり下げること――日常に小説を見出す敏感な心、要は此一点だ。
十二月二十二日(土曜)雨
ひどい雨。朝早く起き、午前中林町にゆき、午飯を一緒にたべて一時すぎ野上さんのところに行く。会うごとに野上さんのよいところ偉いところがわかり自分は益される。
野上さんを、世間が見て居る点とあの人自身の心持の大層違うところは、例えば彼女が貞淑であると云うことにもあらわれる。
彼女は、自分に最高道徳を強いられ、それに向って努力するのは結局自分をそれ丈高めると云う強い自信で耐え静にし、反抗しないのだ。良人に云われ命ぜられるのとは思わず、ずっと客観的に見てしまう。そこにあの人の立派な素直さ――天に対して――がある。私の帽子をぬぐところだ。私には母ゆずりの情熱的な、僻見めいたものがあり、ときに、悪い方の直覚を働かせ自己まで低下させる。