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にっき

日記

宮本 百合子

09 一九二三年(大正十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页

青空文庫

十二月二十八日

十二月二十九日

ひどく暖し。

夕方、かなり強い地震があった。Aの兄、四畳半で餅を切ってくれる。Aかえって来たとき、人によったと見え、不機嫌であった。『朝日』の記者来写真をとって行く。

十二月二十八日(金曜)

今日Aが狙撃者は或代議士の息子だときいて来た。大河内正敏の子がアナーキストであるのと好一対だ。私共中流の、所謂健実な同時に呑気なアンポンタン式の圏境に育ったものにはわからない或雰囲気が、ああ云う華族、政治商売人の家庭にあるのだろう。

夜、靄がこめて居る外苑内をぬけ塩町に散歩にゆく。権田原の崖のはずれに、葉をふるいおとした何かの大木が一本あり、下に冬の夜霧の間に灯のちらちら見える工合が、まるで田舎の風景のようであった。山のはざまの谷間に、小さい民家の灯が見えると云う趣。

『新潮』を買った。

A、Austen の Sense & Sensibility を買って来る。

Aの兄、芝の方に見物にゆく。

Day's library に注文をタイプライトする。

十二月二十九日(土曜)晴

A、一日外出。Aの兄、浅草の藤沢にゆく。十二時少し前英男来る。久しぶりでうれしく、うちでこしらえた親子丼を幾杯もかえる。