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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
真個の善意と、愛から出たことなら、勿論左様な、稍々皮肉な省察は超えて居る。問題外だ。心では他に直接要求することがあり、やり乍ら其那ことに力を注いで居る愚を苦しみ乍ら、一寸何かの暗示にかかって、仕てあげようとか、私が遣って置いてあげようとか引受ける。
性格の弱さは、非常なものと思う。
国男は、ひとの為に労さないことで父母、ときには私にさえも、或感じを生ぜさせる。而し、自分を偽っては居ないだろう。私のように、腹の底は煮え返るような思いをし乍ら、こらえてやっとそれをし、従って、遣ってあげたことに対する沢山の感謝を期待するようなさもしい根性はないのだ。
日常生活に於ては、此処まで心持が細かく洞見されず、其那心持でしても、猶、親切心として買われるところに、殆んど宿命的な不純さがある。
人には親切をすべし、と云うモラルと、或場合、自己だけを守りたい自分の本性との矛盾、衝突が、子供時代、無条件降伏をして来た道徳律に対する伝統的な盲目の譲歩――常識的善の暗示にかかり、Goodness からより、寧ろ Weakness から、表面上、よい行いと称される自己偽瞞行為に堕す。