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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
そんな日本人の片破れに生れたかと思うと情けない。どうぞそんな根性だけは自分の裡にないように。
――○――
人間が或程度まで、ウェル・ブレッドであることは実に大切だと思う。所謂、貴族主義の上品さではなく、率直で、物解りがよく、感情の重さ、強さのあるのは、きっと、よい育ちと共通な性質を持って居る。万人がよい育ちの人とならなければいけない。
貧しさとか、地位の低さそれ自身は何でもないことと云えるが、貧しさ、地位の低さが、同時に人間の頭を暗くし、情操を乾かし、半分の生存とするなら、それは世の中の何よりの罪だ。貧しき人のみの罪でなくその時の社会全般の罪だ。
此点だけ強めて行っても、人間を堕落させる富の過多と、人間を育てない貧の過多が、必ず、天道によって如何うにかされなければならないものであるのは明かだ。
――○――
一夫やAを見、そう思う。心にぽっくりした点がなく、何の為に生きて居るか、半ば恐れ、悲しむ感を得る。育って来るうち、余り、食う為にせかつき、その意識から、はなれず生きて来た為、そのような境遇から脱して、充分、行く道を考え、少しは芸術的、人間的情緒に揺られるべき時になっても、安心してその力に安じきらず、自分を閉じ、矢張り、せくせくと、見えない何かに追われつづけて居る。