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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
彼女も猪年で、二十五歳だそうだ。頭は鈍くないのだのに。万事、私の姉さんらしい挙止だ――人生は、あらまし斯うと納まった点に於て。
十二日。
十時頃起床。四時過まで春江ちゃんの処に居る。
帰宅後、ハウプトマンの「寂しき人々」をよむ。感あり。古いと思う。
丁度、夕暮の薄光が硝子窓にせまり、室内からはついたばかりの新しい電燈の光りが流れ出して、窓わくにおいたナーシサスの白い花が、非常に繊細な美に満ちて見えた。深い拡大された影が細そりした葉、純白の花弁のすき間を満し、ギリシア舞妓の線描模様のある、濃紅の花壺の中で、見とれるほど清楚な美を湛えて居る。
打たれて、久しぶりに自由詩のようなものを作った。
余程土地にも家の者にもなれ始めた。
けれども、まだ新鮮な力は漲り切らないと云う感じ。小さい、鋭い、キラメク前兆はある。まだ洋々としない。が、楽し。自由なのがうれし。
自分の為に、口先で人を使わないようにして行けば、何処でも気軽に住めるとわかり、自由さの範囲が拡がったような楽しさがある。実際、一人で生活して行く上に得た一つの新らしい自信とも云えよう。ひとの親切などと云うものも、どうかすると、地位の優越に伴う無自覚な我利から、過分に要求する場合がありそうだ。