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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
十一月十三日
静脈注射は看護婦では許されません。看護婦は皮下だけです。お風呂は石炭不足で一週に一度、しかも私はやっと、この頃たつ度に入るようになったばかしです。私の風呂好きがこの有様よ。シュトルムはおっしゃるとおりですから、ヘッセをみつけたいと思います。他に何があるか調べましょう。
十一月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕
十一月十三日
十一日附のお手紙頂きました。先ず本の話しから。ヘッセのはとうとうありませんでした。シュミット・ボンの『老婆』というのをともかくお送りしますから、そのうしろのカタログ中から選んでいただいたら、手に入るものもあろうと思います。『現代ドイツ短篇集』は幸いありました。こちらへとって置きましょう。南山堂も郁文堂もモクロクは出していません。この頃こういうものは出せないらしい風ね、紙がなくて。『仏語より英語へ』は題が逆でしたがあったから『老婆』と一緒にお送りしました。面白そうな本ね。英語を元にして、ロシヤならばおしまいをチアと代え、フランス語ならばシオンと代えて、どうやら歩きまわっていた時のことを思い出します。
栗林氏へお金を送ったのは、九月下旬か十月上旬でしたろう。