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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
こういうことも私が動けないからの反ってよい結果です。私は昨夜から泰子の養母になって横にねますが、頭のなかに不調和があるから、泰子の眠りは不安で幾度も目が覚め、泣きます。その度にこちらも起き、この数年来のああちゃんの辛苦がはっきりわかるようです。ああちゃんが心臓を悪くしているのも全くこの泰子の重さと、やっと眠りかけると、それを中断される不断の疲れだということがわかります。私は泰子に自分の心臓はやりたくないから、だんだん工夫してもっとうまく一緒にねている女中さんに手伝ってもらう方法を講じましょう。今度の赤ん坊は私の病気のために、母さんが注射したりすることになり、思わぬもうけものでした。「やっぱり百合ちゃんの病気で、気をもんだりしたのが悪かったのね」などということではたつ瀬がなかったから。
「正直の頭べに神宿る」ということわざは、現代ではこんな形に出てくるのね。しじみやが正直にざるをかついで働いているお蔭で、大金を拾ったというような昔の正直のむくいよりも、どうもこういう方が理屈にかなっていますね。ですからみんな愉快です。私は一晩で疲れて、今日はもうろうとしているけれどそれでも満足です。