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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
九月二十三日
多賀ちゃんならそちらの用も極く自然にたす気持ですし、目白の経験でお互いの気持も相当わかってきていると思いますから。でもこれは又これで多賀ちゃんの婚期ということもあり、もう来年は二十七ですし、単純にも行きますまい。多賀ちゃんの心持も色々と思いやられます。
もう二通分になったからこわいこわい。
『外交史』と『微生物を追う人々』をお送り致しますが『支那イソップ』は家にないこと確実になりました。あちこち本屋を探したが、今はなく何れみ当り次第買います。本郷に一軒この文庫を持っている本屋があって、然も邪魔物扱いにしているらしくて、廃刊のようになるわけもわかるようです。友達に返す本のことわかりました。薬の葉書は着いたでしょうか。あれらを何粒ずつ飲めばよいかということは、先生からよく聞いてお知らせ致します。私は決して本も読んでもらいすぎていません。オースティンの女主人公アンさんは、日曜日に旧友のスミス夫人に会っておしゃべりをしている途中で、水曜日の今夜まで立往生なのよ。決して読み過ぎでないことはおわかりでしょう。ではお大切に。
九月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 島崎鶏二筆「牧草」