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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

十月十五日

上書きだけは 明日のたのしみに

とってお置き

疲れた証拠に

息が こちらへ 触れる程だよ」と。

私はおとなしく うなずいて答える。

「そうしましょう

でもね

誰が

昔から

胸の動悸をはやめずに

愛したためしが あるでしょう」

一九四二年十月一日―十三日

[自注3]十三日――十月十七日、顕治の誕生日の祝いのために、半ば手さぐりで書いたはじめての自筆のたより。

十月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

十月十五日

こんな妙な大きい紙をみつけ出しましたが、これは決して同じ二枚を大きい紙でもうけようというこんたんではありません。今手紙を書く紙がなくなってうろついていたら、ペンさんが気転をきかして自分のスケッチ帖を切って使わしてくれたというわけです。だから下のデコボコがあるのです。ここが金の綴目。こんな紙でこの頃の美術学生は勉強しているのですよ。絵具のホワイトもないのよ。木炭紙と木炭は多賀ちゃんまで動員して探してもらいました。

今日は十五日だからこれを御覧になるのはいずれ十九日頃のことでしょう。十七日に間に合うように、と出した手紙は思い通りに着いたでしょうか?