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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

奇怪なる恋愛

奈落の深さ恐ろしさが引立たぬではないか。

奇怪なる恋愛

「併し、僕は実は気掛りなことがあるのですよ」

川村は少し心配顔になって云った。

「ホウ、幸福のかたまりの様な君にも、やっぱり気掛りなことがあると見えますね」

わしは態々意外らしく聞き返した。実は川村の気掛りな事柄は百も承知なのだ。

「外でもありません。瑠璃子のことです。御存知の通り、あの人は交際好きで、男の友達も少くありませんし、それに、ひどく気まぐれなたちですから、長く留守にする間に、どんな事が起るまいものでもありません。あの美しさですからねエ」

川村め意気地なく嘆息した。

「ハハハ、……君も自信のないことを云い出すではないか。ナニ大丈夫だよ。僕の見る所では瑠璃子さんは真から君を愛している。間違いなぞ起る筈はないよ」

「エエ、僕もそれは信じているのだけれど、やっぱり気掛りで仕様がないのです。ところで、僕、里見さんにお願いがあるのですが、聞いて下さいますか」

「親友の君の頼みだ、どんな事でも聞きますよ」

わしは親友という言葉に力を入れて答えた。

「僕の留守の間、瑠璃子を保護して頂きたいのです。あの人を男友達どもの魔の手から保護してほしいのです。