轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
川村の顔は見えぬけれど、いやらしく弾んだ息が聞える。瑠璃子は、顔を心持上に向けて、眼を細め、口辺に何とも言えぬ嬌羞を含みながら、花びらの様な唇を、ソッとさし出している。
わしは見るに耐えなかった。だが、見まいとしても、目が釘づけになって、云うことを聞かぬのだ。
四つの唇が固く合わさって離れなかった。
わしはそれを目で見、耳で聞いた。
川村の背広の背中を、両脇から、しなやかな白い指が中心へと這い寄っていた。艶かしき虫の様に、五本の指の関節に力がこもって、がりがりと服地を掻く様にして、両人の呼吸と共に、その指が近寄り、遂に、指と指を握り合せてしまった。
唇を合せながら、瑠璃子の両手が、川村の背中を抱きしめているのだ。
川村とても同様である。彼等は今や、両頭の獣の如く、全く一体になったかと疑われた。
わしはギリギリと奥歯を噛んだ。掌に爪がささる程拳を握った。冷いあぶら汗が額からも、腋の下からも、気味悪く流れた。そしてしゃがんだ身体全体が、おこりでも患った様に、ワナワナ震い出すのをどうすることも出来なかった。
若し彼等の狂態が、もう一秒長く続いたならば、わしは気が違って、前後の分別もなく其場へ躍り出したかも知れない。