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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
五円なんて金、わたし等が、一年働いたって、蓄まりゃせんのに」
「なに情ないこと、いうとるかね。今に、十円、百円の金を、あんな人たちの顔に、打っつけてやるよ」
マンの眼は、妖しく、ぎらぎらと光っていた。しかし、その黒眼勝ちの瞳は、うっすらと、涙でぬれている。
飯代部屋の方から、玉井金五郎が、頭をかきながら、帰って来た。
「敗けた、敗けた。どうも、今日は調子が悪い。甚公から、二枚落しで、四番も立ち投げを食うた」
「金さん」
新之助は、吉田磯吉が、コレラ騒動の新聞を見て、今日、二人を晩飯に招ぶ、といっていることを、ひととおり、話した。
「どうする? おれは、いやじゃが……」
「行ってみよう。吉田磯吉さんの名は、聞いて知っとる。どんな親分か、逢うてみたい。なんでも、ぶっつかてみんことにゃ、わからん」
金五郎の語調は、弾んでいた。
その夜、饗宴は、深更までつづいた。
山下松次は石炭荷役の請負師であるが、手遊びが好きで、土地は勿論、九州一円の顔役とは、その方面のひろい交際があった。そして、山下邸で、四季に一度くらいずつ、相当大きな賭博が開帳される。今度は、その秋の集まりらしかった。