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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

聞きちがいすんな」

「それでも、さっきから、船のうえで聞いとったら、昨夜、吉田親分の盃をつっかえした、ちゅうて、話しとったじゃないか」

「そんな風に、いうたんじゃない。あんたは、そそっかしやじゃけ、すぐ、勘ちがいして、困る」

「今売り出しの吉田親分を、お前らのような若僧が、蹴ったちゅうから、おれは、かけつけて来たんじゃ。蹴ったのじゃないのけえ?」

「どうも、おっさんの話は、言葉が悪いなあ。蹴った、の、つっかえした、の、って。そうじゃないよ。玉井が――ただの酒なら、頂戴しますが、親分子分の盃なら、もうすこし考えさせて下さい。……そういっただけさ」

「ほれ、見ろ。それが、盃をつっかえして、蹴ったことになるんじゃ。馬鹿な奴じゃなあ。おれなら、よろこんで、子分にして貰うのに。お前ら、運を取りにがしたぞ」

「まあ、カラスのおっさん」と、横から、老人仲仕が、「そう、横から飛びだして、まぜくらんでくれ。今、話が面白うなりかかっとるところじゃけ」

新之助も、助け舟が出て、ほっとした面持で、一つ、咳をし、

「それで、江崎満吉が、吉田さんに、果し状をつきつけて、大喧嘩になるんじゃが……」