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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

あてらのこと、森はんが、露探やいうた、いうて、誰や、おたくの組の人が、来やはったけど、あて、そんなこと、なんとも思わんね。ほたら、子分さんたちが、森はんとこ仕掛けて行ってこないなひどい目にあわせて、……忠義だてらに、要らんことばっかり……吉田の親分さんは、玉井はんから、話聞きはった、いうで、あてを見舞によこしはりました。少いけど、膏薬代を、といやはって、ここに、あずかって来て居ります」

「そんな銭、要らん。馬鹿にすんな」

新之助は、苦痛に歪む顔で、唾を吐きだすようないいかただった。

「君香さん、よくわかりました。吉田親分さんのお志、ありがたく頂戴いたして置きます」

「こら、金さん、そんな汚れた銭、受け取んな」

「まあ、おれに委せとけ」

金五郎は、そういって、君香から、「御見舞」と、表に、太く墨書された、部厚な慰斗袋を受けとった。

「ほな、また、参ります。お大事に」

君香は、傘と帽子と手袋とを取ると、新之助の方にも、叮嚀に挨拶して、部屋を出て行った。しばらく、えもいえぬ芳香が、部屋のなかに、残っていた。消えるのが惜しいようである。

「敵は、どこに居るか、わからんなあ」