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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

しかし、もとより、出鱈目な者ばかりであったわけではなく、庭に面した広間に集まって、真面目な話をしている親分連もあった。

大庭春吉が、ぽつりぽつりと、重い口調でいっている。

「聯合組も、もっと、しっかりせんと、共働組に、仕事を食われてしまうぞ。なにしろ、相手は、吉田磯吉の一の子分の友田喜造じゃけなあ。……どうも、いざとなると、腕力で来るんじゃけ、うるさいわい」

「港の仕事にまで、ドスを持って、食いこんで来られちゃあ、たまらんなあ」

「なあ、玉井」

と、縁側で、助役仲間と、盃片手に、将棋をさしていた金五郎へ、大庭春吉の顔が向いた。

「はあ……?」

ふりかえると、

「永田杢次はあげな風で、さっぱり、頼りにならん。玉井、ゆくゆくは、お前のような、しっかりした若い者に、聯合組を守って貰わにゃならんど」

「いえ、わたしなんぞ、……」

金五郎は、びっくりして、尻込みした。

このとき、廊下に、草履の音がして、襖が開いた。一人の若い女が、顔を出して、

「盆が始まります。親分衆たち、どうぞ」

「打つ」組の案内らしい。

金五郎は、眼を凝結させた。そこは、いくらかうす暗くて、女の顔は、はっきりと見きわめられなかったのに、金五郎の胸は、もう、ドキドキと、波打ちはじめた。