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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「奇遇ですわね、三年も経って、こんなところで、お目にかかるなんて。でも、あたし、ほんとに、あなたのこと、ときどき、思いだしましたわ。「四国屋」での印象、忘れられないんですもの。だって、素人の方で……ことに、あなたは初めてらしかったけど、……あんなに、あざやかな勝ちっぷりを見せた人なんて、やくざ渡世の永年に、一度も見たことなかったわ。玄人連中が、アレヨ、アレヨ、とあっけに取られている顔つきったら、なかったのね。半方の定張りで、一度もくずれずに、あっさり、勝ち逃げ。……ホホホホ、……後で、関東の親分衆が――あれは、なんだ? 素人面して、鬼殺しじゃねえか。……なんて、話してましたよ。……でも、一度っきりだったのね。こんなところで、お逢いできるなんて……」
便所から出て、手水を使っていた大庭春吉が、
「なんじゃ、玉井は、その姐さんとは近づきかい? 隅に置けんなあ」
と、笑った。
二階の「菊の間」に行った。客が揃わないので、盆茣蓙はまだ始まっていなかった。やがて、二十人ほどになると、開帳された。もう、こういう雰囲気にも、金五郎はおどろかない。
銀杏返しの女が、半方の中央に位置して、壺振りをやるらしいので、金五郎は、丁方に廻った。