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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
やっぱり、子供のない者は、動物を可愛がるというのは、ほんとうじゃろうかなあ。それにしても、あんただち夫婦、どっちも身体が丈夫なのに、どげえもて、子供が出来んとじゃろか。まあだ、なんの印もないのかな」
「ありません」
「おかしいなあ。もう、一緒になって、二年になるとじゃろ?」
「子供が産まれんで仕合わせですわ。こんな貧乏世帯では、養いきりませんけ」
「なんの、一人口は食えんでも、二人口は食える、というてな、猫を七匹も飼うよりゃ、わが子を育てる方が楽よね」
ヨネは、猫の群れている縁側に、茂次平をおろして、自分も腰をかけた。
すがすがしい朝の光線が、いっぱいに、縁にさして来た。港の方で、汽笛の音が聞える。
「そらそうと、昨夜は、いったい、どげえしたとな?」
「泥棒が入りましたとです」
「泥棒?」
ヨネは、団栗眼をむいた。まだ、そこらに、その泥棒がいるかのように、気味悪そうな眼つきで、あたりを見まわした。
マンは、笑って、
「泥棒にやる金を、お姐さんのところに借りに行ったんです」
「なんてな?」ヨネは、仰天して、「そげな馬鹿なことが……」
「ほんとです。昨夜の泥棒は、正直そうな人でした」