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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

大きな握り飯三つに、これも太く輪切りにした沢庵の片が五つ、これが一人前、竹の皮で巻かれ、古新聞に包まれる。敏速に、出来る端から、籠に詰められる。

永田ヨネを加えて、女仲仕たちが四人、弁当作りに、余念がなかった。

「おトキさん」

と、マンが、一人の女を呼んだ。

「はい」

「あんた、すまんが、酒屋に一ッ走り、行って来ておくれんか。五升樽を二つ、すぐ、永田まで届けて下さい、って」

「一斗ですね? 行って来ます」

トキが門口を出ると、入れちがいに、永田組の印半纏を着た、少年のような男が、入って来た。「中学生」と愛称されている、谷俊次である。

「弁当、もう出来ましたか?」

「もう、じき、出来る。俊ちゃんが持って行ってくれるとな?」

マンは、「中学生」が、故郷にいる弟の牛三によく似ているので、可愛がっていた。

「はあ、僕が持って行きます」

俊次は框に腰をおろして、そこに置いてあった薬缶から、ゴクゴクと、咽喉を鳴らして、水を飲んだ。それから、思いだしたように、沢庵をきざんでいるマンの方を向いた。

「玉井の姐さん」

「はあ?」

「今、新川の岸壁から来たんですが、大庭の親分が、浜に出て居られましたばい」