轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
風が、冷たい。
「今、何時ごろかな?」
誰かが、そういったけれども、時計を持っている者はなかった。
「五時じゃ」
と、断定的に、いう者があった。
「どうして、わかる?」
「安養寺の鐘が鳴りよる」
そういわれて、耳をすますと、未明の空気の奥底に、余韻をながく引いた鐘の音が、かすかに、ひびいていた。若松にある安養寺は、古い由緒のある浄土宗の寺である。朝の五時には、かならず、時鐘を撞く。鐘楼は街を一望に見下す高台の突端にあるので、その音は、ひろく、遠く、伝わる。それでも、港外になる燈台沖までは聞えにくいのだが、西風のせいであろう。
「五時か?」と、舳に腰をおろしていた金五郎は、ちょっと、不審そうに、「パナマ丸は遅いなあ。四時過ぎには、入港する予定ちゅうことじゃったが……」
「ボーシン、すこし遅れた方が、ええよ。明かるうなってからの方が、危険がないけ」
「それも、そうじゃが、暗い方が、こっちの作戦が、敵方に知られんですむ」
「角助の野郎、人非人じゃなあ」
「繋船が、三番浮標じゃけ、きっと、あいつ、ブイのところに、伝馬を漕ぎだして待っとるよ。それで、こっちの鼻を明かそうと考えとる。