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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎は、弓張提灯に、火を点けた。松川源十も、それに倣った。永田組の三字が入った十個ほどの提灯が、俄かに咲いた花のように、海上に光を落した。
キイ、キイと、櫓臍が泣く。二隻の伝馬船は、十間ほどの間隔をおいて、力一杯、港内へ向かって漕がれている。その中間に、やがて、追いついて来たパナマ丸が、舳を乗り入れて来た。
「本船に寄せろ」
金五郎のその号令で、伝馬船は、パナマ丸と平行して走りながら、ぐんぐん、汽船の船腹へ寄って行った。巨船のまきおこす波のあおりが、急に、ざわついた大きな横波になって、伝馬船をはげしく動揺させた。下手が漕ぐと、櫓が浮いてしまうのだが、櫓方も鍛えた腕だった。吸いつけられるように、伝馬船は、赤い腹を出している汽船へ近づく。
「危いぞう」
すでに、パナマ丸では、船の進路に、提灯を点した二隻の小船のいるのを認めていて、甲板の上から、船員たちが怒鳴っていた。赤いカンテラを振り、
「ぶっつかるぞう」
「沈んでしまうぞう」
「離れろう」
などと、口々に、叫んでいる。
舳に突ったった金五郎は、提灯を、丸く、輪形に、振っていたが、汽船の舳が、二隻の伝馬船の中間を過ぎると、それを、傍の仲仕に渡した。