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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
深謀遠慮、長期作戦の決意をした模様である。
昼夜兼行で、仕事がつづけられた。二日、三日、五日、と過ぎた。金五郎の左腕に、みごとな昇り龍が、日とともに、完成されて行った。
お京は精魂を傾けつくしているように見えた。豊麗な顔に、やつれがあらわれた。
しかし、危険は増大して来た。どんなに忍耐していても、若い男女が、二人きり、一室で起居をともにしているということは、杓子定規では行かない。道後以来、三年間も、不可解な思慕の像を、心の乾板に焼きつけていた金五郎の方にも、いつ陥没しないともわからない要因があった。ときどき、ふっと、悪魔の心に誘われて、切ない瞬間がある。
日夜、顔をつきあわせ、裸の肉体を身近に接触させつづけている生活が、金五郎は、息苦しく、恐しく、なって来た。そして、遂に、片腕だけ仕上った夜、お京の隙をうかがって、待合を脱出したのであった。金五郎は、
(お京のことは、マンには、話すまい)
そう、心の中で、思い定めた。
重々しく掩いかぶさって来るお京の幻影を、追いはらうようにしながら、金五郎は、龍が上肢につかんでいる菊の花束を、マンに、示した。
「この菊は、門司時代のお前のことを思いだしたもんじゃけ、特別に入れたんじゃ。