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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

七人の敵

松川源十は、いった。

「金さん、おれたちは、みんな、よろこんで、あんたの子分になる。みんな、あんたのため、命も惜しまんというとる。玉井組の札を掛けて、おれたちの親分になっておくれ」

金五郎は、遂に、決心した。マンも、同意した。金五郎夫婦は、若松に移住した。

聯合組の事務所の壁から、古ぼけた「永田組」の札が外され、真新しい「玉井組」の札がかかげられた。

その日は、明治三十九年二月十九日。

金五郎、二十七歳。

その記念すべき日の朝、マンは、夫に、

「あなた、あたし、赤ちゃんが出来たかも知れんわ」

そういって、ぱっと顔を染めた。

七人の敵

「喧嘩じゃ。喧嘩じゃ」

そう叫びながら、幔幕の外を、走って行く者があった。

「どこで、やっとるんじゃろうか?」

角助が、呟くと、

「放っとけや。珍しゅうもない。花見に喧嘩はつきもの、景物の一つたい。喧嘩のない花見は、花見のうちに入らん。そんなことより、おれが歌うけ、芸者衆、三味線をひけ」

島村ギンは、そういって、酒を一杯満たした湯呑茶碗を、ぐっと、一息に、飲みほした。

「ドテラ婆さん」と呼びならされて、本名の方は忘れられているギンは、赤毛氈のうえに、胡床をかいて、もう、だいぶん、陶然たる様子だ。