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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

それを見た金五郎は、徳利の紐を口にくわえると、かたわらの桜の大木の幹を、するすると、よじ登った。またたく間に、高い梢に、猿のように、腰をおろした。

「やい、腰抜け、降りて来やがれ」

下から、呶鳴るのに、

「斬られに、誰が降りるもんかね。まあ、そう騒がんと、一杯、おあがり」

金五郎は、笑いながら、徳利をさかさにして、眼下の暴漢たちの頭から浴せかけた。撩乱と咲きみだれた桜の間を縫って、黄金色の滝がながれ落ちる。悪漢たちは酒に濡れて、飛び散った。

石を拾って、投げあげはじめた。みんな見当が狂っている。命中弾があると、金五郎は、徳利で受ける。コンと音がして、落ちて来た弾丸が、暴漢たちの頭に当たる。

「喧嘩じゃ。喧嘩じゃ」

と、弥次馬が、もう、だいぶん、集まっていた。そして、奇妙な喧嘩をながめて、げらげら笑った。

神社裏で、花見宴を張って、金五郎の来るのを待っていた玉井組の連中も、やっと、これに気づいた。かけつけて来た。彼等は喧嘩の見物や、仲間入りをする気はなかったのだが、桜の木のてっぺんにいる金五郎が見えたので、びっくりしたのである。

「六ゾロの源」、大川時次郎、「ノロ甚」