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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

警察に知らしゃあ、わたしが後で殺されるし、……そしたら、今朝になって、わたしと仲ようしとる、やっぱり傭兵で出かけたバクチ打ちが、すっかり、話してくれたんです」

君香は、ためいきをつくように、

「ほんまに、金さんも、難儀やなあ。あての死んだお父はんが、よう、いやはってた――男は、いったん、家の閾をまたいで出たら、七人の敵が居る、と思え。帰って来ると思うな。……って。金さんも、売りだして、男になるのはええが、この若松は、七人どころか、百人もの敵が、うようよ、しとるのやさかい、命は、なんぼあっても、足らへん。ただ、ちょっと、頭をもたげかけさえすりゃ――生意気や、殺ってしまえ。……まるきり、無茶や。他人事や、あらへん。いつ、こっちの番に廻って来るか……?」

その兆候は、すでに、あるのであった。

お京の張りのある眼が、異様に、光っている。

父と母

夕暮近くなると、雨が降って来た。生あたたかい、煙った春の空気のなかに、金比羅山の桜がぼやけ、その右につらなる高塔山のいただきには、密集した松林が、山上に乗りあげた軍艦のようである。港の方で鳴る船の汽笛も、寝ぼけたように、ひどく、もの憂い。