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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
父と母
「旅が、しとうなったなあ」
金五郎は、両手を頭の下に架って、寝ころんだまま、ひとり言のように、呟いた。
今日は、仕事は休みであった。さっきまで、新之助から借りた刀の手入れをしていたが、それがすむと、自分の身体を、裏庭に面した縁の廊下に、面倒くさそうに、転がしたのである。
マンは、かたわらで、赤ン坊の襁褓をこしらえていたが、これも疲れたように、手を休めた。浴衣や襦袢の着くずしを、オシメに縫いなおしたのが、五六枚、重ねてある。
かたわらの煙管をとりあげて、おいしそうに、一服吸ってから、肩で吐息をつくように、
「骨休めに、どこかに、行っていらっしゃいよ」
と、いった。
「一人じゃ、つまらん。お前と、行きたいんじゃ。一緒になってから、まだ、新婚旅行ちゅうもんを、しちょらんからなあ」
「ウフフ、新婚旅行なんて、そんな洒落れたもん、あたしたちのような貧乏人の働人がする柄じゃないですよ。あれは、金持のするもんやわ。それに、もう、三年も経って、子供まで出来るというのに、新婚でも、ありゃせん」
「そんなこた、ないよ。これまでは、働くばっかりで、暇も取れなんだが、今なら、ボーシンの源公に後を頼んで、五日や一週間くらいなら、二人で、出られる。