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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
深夜の町を、永田ラムネ屋へ、急ぎながら、
(どんなむずかしい仕事でも、暴力団でも、なぐりこみでも、火でも、矢玉でも、怖れたことのない、そして、負けたことのない玉井金五郎が、女房から、やられてしまった)
それを考えると、おかしくてならなかった。
大川時次郎の頭に、故郷での昔の出来事が浮かぶ。――専売局の役人が、狐に化かされたことである。横柄で、弱い者いじめを専門にしていた、好色漢の「鬼」が、或る日の夕暮どき、七瀬の水車小屋の中で、倒れていた。高門の武十旦那が、虫の息で、這いだして来る「鬼」に出逢った。それから、村中の大評判になった。しかし、それは、実際は、狐に化かされたのではなくして、マンを手ごめにしようとして、遭難したものだ、という真相は、いつか、誰からも、知られるようになっていた。
父親の谷口善助も、それを知ってからは、
「村の娘ッ子どもも、おらがのマン坊に見ならえ」
などと、自慢する始末だった。
その、父から伝授された、「女の護身法」を、マンが、夫に対して、用いたのである。
(はげしい女じゃ)
時次郎は、おかしい気持が薄らぐと、マンが、怖くなって来た。