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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
飲み食いの跡始末まで、知ったことか。……なんて、いう。あれだけの宴会をして、一銭も取れなんだら、おれの店はつぶれるよ」
「そんなことか。友田のいいそうなことじゃわい。もともとは、おれから出たこと、お前に迷惑をかけてはいけん。おれが、なんとかしよう。いっぺんには払えんが、……なんぼ、掛った?」
「いや、お前から出して貰うことはない。仲裁役が全部を見るのが、やくざの仁義じゃないか。友田もこの町では名うての顔役じゃ。なんとかして、友田から出させるよ」
新之助は、口で、そんな強いことをいっているけれども、それがきわめて困難事で、或いは不可能に近いかも知れぬということは、自身でよくわかっているのであった。
夕暮、玉井家では、晩餐がはじまっていた。明日は、早朝から、聯合組の大仕事、アメリカ航路のメキシコ丸の焚料炭、三百トン積込み荷役を控えて、前景気に、金五郎中心に、一杯、飲んでいた。
女中のジュンが、甲斐々々しく立ち働いている。けれども、肝腎のマンがいない家は、妙に、気抜けしたようだ。
にぎやかに談笑していると、玄関を訪れる者があった。時次郎が、出て行くと、着流しに、ふところ手をした大男が、にゅうっと立っている。