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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
ぶっきらぼうではあるが、どこかに、親しみの感じられる調子で、いった。
それが、かえって気味悪く、金五郎の方は、警戒心を、いよいよ、厳にした。この街で、「吉田天皇」という者さえある、大親分の吉田磯吉が、なにかと対立している玉井組の牙城へ、先方から、予告もなしに訪れて来ることも変であるし、たった一人というのは、なお、おかしい。
油断をさせるためかも知れない、と思い、金五郎は、それとなく、表の気配に、注意した。黄昏の薄明の中に、石ころの多い狭い道路が、白々と、ひろがって、わずかの風に、溝縁の雑草がゆらいでいる。しかし、金五郎の鋭い眼は、表格子の戸袋のかげになっているところに、誰かの潜んでいることを見逃がさなかった。
(懐手をしているが、ピストルか、匕首かを忍ばせているのかも知れん……?)
いつかは一度、来なければならぬ最後の対決のときが来たという緊迫感で、金五郎は、武者ぶるいして来た。中腰になっていたが、いつでも、機敏に、跳躍出来るように、全身をバネ仕掛けにした。
両子の三つ指を、畳のうえに、軽くついて、
「よう、お出で下さいました。わたくしに、なにか、御用で?……」