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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

両手を前帯に突っこみ、金五郎の歩くままにしたがっていたが、老醜といってよい五郎のどす黒い顔には、さっきから、異様に複雑な表情が、狐火のように、あらわれたり、消えたりしていた。

「あんたは、お京さんの消息を知っては居らんでしょうね?」

「知って居りますとも」

と、言下に答えた。

「どこにいます?」

「浅草です。……なんなら、これから、一緒に参りやしょうかね?」

そして、二人は、電車に乗った。

浅草。

雷門から入ると仲店の美しさに、金五郎は眼を奪われた。狭い石甃の道をはさんで、両側に、あらゆる商店がならんでいるが、通常日なのに、まるで祭のようで、日本髪の美しい姿が、どの店にもちらほらしている。

金五郎はきょろきょろしているけれども、五郎の方は、(浅草なんぞ、珍しくもねえや)そんな仏頂面で、どんどん、観音堂の方へ行く。

「五郎さん、ちょっと、待って」

金五郎の呼ぶ声で、引きかえして来た。

「ちょっと、買い物をしたいから、……」

「お京さんへの土産なら、やめときなせえ。そんな心配は要らねえ」

「いや、それは、お京さんに逢うてからのことにするが……ちょっと」

お京はどうしているのか、さっぱりわからない。