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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
般若の五郎は、金五郎がいくら訊ねても、逢えばわかる、というきりで語ろうとしないし、ただ、深刻な顔つきで、「びっくりしないで下さいよ」というばかりなのだった。しかし、その謎めいた言葉も、五郎のいうとおり、逢いさえすれば、一切が氷解する。
金五郎が立ち止まったのは、仲店の一軒に、たくさん並んでいるライターを見つけたからだった。
「そこのガラスの中のを、一箇くれませんか」
「これでございますか?」
「そうです」
金五郎は、唐突に、不可解な昔日の回想に捕われていた。大都会の雰囲気の植えつけた中古の感傷かも知れない。ライターはもはや珍しいものではなくなっている。若松でも売っているのだが、今、嘗て、青春の日に、マンにあたえた「懐中ランプ」と寸分たがわぬ形の品を発見して、足がすくんだのである。
(マンの土産にしよう)
天の啓示のように、思い定めたのであった。
財布を出して、金を払った。
仁王門の両側に、巨大な仁王が二体、夜目にも光る恐しい団栗眼をひんむいて、立ちはだかっている。山門の中心からは、これも巨大な一足の草鞋と、赤提灯とがぶら下げられてある。なにもかも大きいものずくめだ。