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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

の言葉で、二人とも、かるく、マンへ、頭を下げた。

マンも無言で、会釈をした。

「おマンさん、どこへ?」

「原田雲井さんのとこへ、ちょっと、寄ろうと思いまして……」

「ありゃりゃ、たった今、おたくの勝則さんが、原田さんとこ行くちゅうて、出たばかりじゃが。今まで、うちで遊びよったよ」

その言葉に、妹芸者の方の顔が、ぽッと赤らんだ。

「小母さん、失礼します」

姉芸者の方が、立ちあがった。

「まあ、ええじゃないか。玉井のごりょんも猫好き、あんただちも猫好き、そうじゃ、今帰った勝則さんも猫好き、外は春雨が降っちょる。ゆっくり、みんなで、猫の話どもしようや。この碌なこたひとつもない世の中に、猫の話だけしとりゃ、天下泰平じゃよ」

「ええ、でも、お稽古の時間ですから……」

「藤間のお師匠さんとこかへ?」

「はい」

「東京から、いせさんが来とるてなあ?」

「妹が、今度の温習会で、清元の「夕立」を踊るもんですから……」

「さぞ、きれいじゃろなあ。ぜひ、観に行くばい。花輪でもやろか、「猫丸さんに」ちゅうて、ワッハッハッハッ」

「それでは」

つれだって、姉妹は、「猫屋敷」を出た。一匹ずつ、猫を袂で抱き、姉のさす一本の蛇の目傘に入った。