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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
勝則が生まれたとき、籍がなく、やむなく、永田杢次の二男として入籍した。ようやく、若松に寄留し、勝則を玉井の籍に入れようとしたが、「養子」としてしか、記帳を許されなかった。規則がやかましい。法律のことなど何ひとつわからぬ金五郎夫婦は、途方に暮れた。すると、井上安五郎が、
「そんな話なら、原田三百代言君にかぎる」
そういって、紹介してくれたのであった。
「若松新聞社」をたった一人で経営していた原田雲井は、福岡の士族で、父が判事、若いころは、裁判所の書記をしていたことがあるので、法律には明かるかった。この原田の献身的な努力の結果、勝則は、はじめて、玉井家の長男として、戸籍が訂正されたのである。このため、金五郎夫婦は、原田へ深い感謝の念を抱いていた。そして、この奇人ではあるが、親切で、実践力に富む原田雲井は、いつか、玉井家の家族の一員のように親しくなり、なにかと玉井家の相談相手になるようになっていたのである。
「家内が、晩のおかずば買い出しに、町に出とるもんじゃけん、お茶も出されんが、……」
そういって、台所の方を眺めまわしてから、やっと、気づいたように、
「そら、そうと、勝則君、なんか、用じゃったとな?」